不妊の約50%が男性因子

不妊は身近な社会問題となっています。

厚生労働省が作成している資料によると、2017年の全出生児は946,065人で、そのうち6%に当たる56,617人が生殖補助医療で誕生しています。

これは約17人に1人の出生児が生殖補助医療で誕生していることになります。

そんな中で、今まで不妊の原因は女性だと考えられてきていましたが、最近の研究だと男性因子が48%を占めると言われています。

WHO(世界保健機関)によるとこの内訳は男性のみが24%。女性のみが41%。男女ともに不妊原因があるのが24%。原因不明が11%。とされています。
つまり不妊原因が夫婦両方にある可能性が高いため夫婦で一緒に検査や治療をする必要があります。

出典

https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/dl/30l.pdf

40年で精子の数が半減?

さらに驚くべきことに、過去の研究データを元に統計を使用して調査した結果によると、40年間で精子の数は半減していると言われています。

1973年から2011年に精液サンプルを提供した42,935人の男性の185件の研究をさらにまとめたメタ分析によると、1973年から2011年にかけて精子濃度が9,900万/mLから4,700万/mLに減少し、総精子数も33,800万から13,800万まで減少しています。
つまり精子濃度と総精子数の両方が50〜60%減少していることになります。

この論文によると、北米、オーストラリア、ヨーロッパ、ニュージーランドを含む世界の西側の先進地域でこの減少が最も顕著であらわれており、アジアが含まれてはいないものの不妊傾向を捉える重要な論文となっています。

出典

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28981654/
https://www.inviafertility.com/blog/is-there-really-a-male-infertility-crisis

妊娠につながる精子の基準値

WHO(世界保健機関)では自然妊娠可能な基準値というものがマニュアルに示されています。

射精された精液の量「精子量」
精液中に含まれる精子の数「精子濃度」
動いている精子の割合「運動率」
精子の合計数「総精子数」
などがあります。

精子量1.5mL以上、精子濃度が1,500万/mL以上、運動率が40%以上、総精子数3,900万という数値が基準値だと言われていますが、この数値は12カ月以内にパートナーが自然妊娠した集団で100人中の下から5番目に相当する下限基準です。
 

この基準値を下回ると「男性不妊」と診断されるので基準値以上を目指す人が多いのですが、この数値はあくまで下限基準です。この数値を超えたからといって下から5番目なので確実に数値以上であることを望みたいものです。

ちなみに中央値は、精子量3.7mL、精子濃度7,300万/mL、運動率61%、総精子数25,500万となっています。

出典

http://101880-001.akibare.ne.jp/14496241808203

最低2回は精液検査が必要

精子の数は生活習慣やストレスなどで日々大きく変動します。
1992年に発行されたWHOによるラボマニュアルによると、毎週精液検査をしても精子濃度は10倍に増えることもあれば、1/10に減ることもあるのが確認されています。

そのため精液検査は、1回の検査で判断せずに一定期間をあけて複数回検査することを推奨されています。
しっかり精液検査をして、精子力の改善に努めましょう。

出典

https://www.aab.org/images/WHO%204th%20manual.pdf
https://www.okanouenooisyasan.com/knowledge/sperm/02/